ANU医学部の学生は皆 Postgraduate (4年制大学卒業後に進学) でありその後医学部を4年で卒業します。同じ科を回るANU学生はものすごく優秀で、毎日圧倒されながら刺激を受けています。3年生のローテーションは僕ら Elective student と少し異なり、1クール5週間、今週が新たなクールの最初で、おかげで新しい友だちが増えました。良い友達に恵まれ、助けられながら毎日元気に勉強しております。
さて、私は4月の4週間は老年病内科 (Geriatrics) で実習をしております。先週まで一緒だった友達にある本を紹介してもらいました。
Nicholas J Talley, Simon O’Connor "Examination Medicine: A Guide to Physician Training 7ed" 2014, Elsevier Australia |
オーストラリアの医師は、Physician (ここでは内科医を指す) を目指す場合、Intern
1年、Resident 1年、その後3-4年のトレーニングを積んで、内科専門医試験を受け、パスした後に更に細かい専門科へ分かれていくという流れを経ていきます。この内科専門医試験には
RACP examination というものがあります。ちなみにこのRACP exam は世界的に見てもレベルが高く、合格率は50%程度だそう。その試験は筆記試験に加え臨床能力を試験するものがあり、それは"Long case" と
"Short case" というものに分かれます。この本はその2つのためのものです。
つまり卒後5年目くらいの医師レベルの本です。しかし、なんとANU学生はこの本で身体所見の勉強をしているそうで!なんとまあ。
私は実習2日目に、先生に「あの患者さんのLong case をやってごらんよ」と言われてやりました。その後友達がShort case をやるのを見させてもらいました。また、あと2ヶ月後にまさにRACP exam を受けんとする先生にくっついて本物のShort case を見学しました。これらを経験して実力不足を実感し、上記のような身体所見を学べる本に頼らざるをえなくなったというわけです。(詳しくはまたGeriatrics の実習の紹介の時に書くことにします。)
それはさておき、Long case, Short case って一体どんなのでしょうか?
・"Long
case"
患者に詳細な問診・全身の身体所見を取った後、上級医に患者の情報から鑑別・検査プランまでをプレゼンし、上級医の質問に答える。入院患者の場合は患者に入院時を想定してもらい、まさに医科歯科のmini-CEX の本格版。
・"Short
case"
'This 50-year-old man presents with dyspnoea on exertion
and orthopnoea. Please examine his cardiovascular system.' などの指示を受け、上級医の前で限られた短い時間で必要な身体所見を取り、その後所見から鑑別診断・検査プランまでをプレゼンし、上級医の質問に答える。
こんな感じ。そして何が言いたいかというと、「ANU医学部の実習も"Long
case" と"Short case" がコアになっている」ということ。
このスタイルが素晴らしいと思うのは、新入患者に対する問診や診察法を学べる点と、詳細なフィードバックを受けられることです。患者や先生とのInteractive なやりとりがあり、FOCUS でトレーニングしてきた力を試す機会としては最高です。(FOCUS について:ハーバード組のblog 参照)
どちらかというと、入院患者を毎日フォローするような実習ではなく、患者へのファーストタッチに重点が置かれているように思われます。
すべての科でこのような実習方法が取られているわけではありませんが、この2つが学生の大きな学習の場となっているのは確かです。他の科を回るANU学生に聞いてもこれらにトライしている話をよく聞きます。
しかし、医科歯科の実習で学べるような、「毎日担当患者を診察して検査結果を確認してアセスメントとプランを考えながらカルテを書き、フィードバックをもらう」という機会はあまりないように思われます。3年生の友達もみな、「特定の患者をフォローするのはあんまりないなー」と言っていました。
とりあえず、医科歯科と比較して「ANUに特徴的と思われる実習内容」について書いてみました。
老年病内科の紹介も後々書いていきます!
かわでぃー
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