2015年4月28日火曜日

Geriatrics and Aged Care まとめ①

 さて、4月の実習は残り3日となりました。かわでぃーです。ANU の老年病内科の紹介です。

 私が配属された科はGeriatrics and Aged Care というDepartment で、その中でもAcute Care of the Elderly (ACE unit) という病棟で主に実習しています。他にも隣にSub-acute の病棟もあります。ACE unit の患者は全て、「救急を受診して」入院となった患者の内、比較的高頻度に検査を要する、または治療が急がれる高齢者です。心筋梗塞の患者もいれば、糖尿病患者、骨髄炎で手術を要する患者、慢性心不全やCOPDの急性増悪の患者、肺炎の患者など、多彩な症例を見ることができます。以下に、この実習で必要と思われる医学知識、疾患について羅列してみます。

慢性心不全、心筋梗塞、不整脈、高血圧、心雑音、心電図、肺炎、COPD、間質性肺炎、糖尿病、足潰瘍、蜂窩織炎、せん妄、肝硬変、急性・慢性腎障害、尿路感染症、関節リウマチ、骨粗鬆症、側頭動脈炎、電解質異常、認知症、うつ、ADL、抗菌薬

 内科の幅広い知識が必要となり、大変勉強になります。循環器疾患が比較的多い印象です。私は5月の医科歯科での循環器内科のローテーションを回れなくなったため、それを埋めるという意味でもいいチャンスでした。

 私はGeriatrics を第1希望で出しましたが、「老年病内科」というのに特別興味があったわけではありませんでした。昨年ANU のGastroenterology で2ヶ月実習をされた本当の第1期生である医科歯科のT先輩の情報によると、Geri では詳細な問診から全身の身体所見を取ってプレゼンするという非常に基本に忠実な学習ができるとの噂をうかがっておりました。医科歯科では外来での予診取りや合計3回のmini-CEX が問診・診察・プレゼンをできる大変良い機会ですが、それでも「詳細な」「全身の」というわけにはなかなかいきませんし、回数も正直多くないです。大変貴重な機会だろうと期待して応募しました。

 では実際どうだったか。ANUではどんな実習ができるの?で重要なポイントについては既に書きましたが、細かく見ていきます。
各種 Handover は朝の申し送りのカンファで、学生は基本聴講。Medical Handover では前日の全科の入院患者の申し送りが行われます。とてもQuick で聞き取れない上に教育向けの場ではないのでついていくのが大変難しいです。でも、たまにHandover の前に学生を巻き込むInteractive なショートレクチャーが不定期で入ることがあり、やはり難しいものの勉強になります。

Ward Round 回診では先生にくっついて患者に会い、先生がとった所見や患者とのやりとりの中で決めた今後のプランなどをその場でカルテに書いていきます。病棟のカルテは全て手書きな上、先生の発言を聞き取ってカルテにまとめるのはかなり大変ですが、少しずつ慣れてきました。回診はだいたい12時までかかりますが、これに参加することは非常に重要です。なぜなら、回診で先生が患者に分かりやすく病状や今後のプランを説明するときの話し方が自分にとっても一番分かりやすく、患者を理解するのに役立つからです(それでもリスニングは難しい…)。先生が学生に質問をすることもありますし、学生が診察するのに最適な患者を見つけて教えてくれたりすることもあります。

レクチャーも定期的にあります(表以外にも)。レクチャーはどれもCase based learning で少人数制、先生の質問にどんどん答えていく形式で、ANU学生からは大いに刺激を受けています。発言しやすい場なので質問もどんどんでき、レクチャー後は大変すっきりします。レクチャーの内容も、例えば肺炎のケースの場合、肺炎で見られうる身体所見は何か(例えば肺のconsolidation によるBronchial breathing)、逆にBronchial breathing がある場合consolidation 以外に何が考えられるか、肺炎のリスクファクターは何か、必要な検査、起因菌、初期治療、使用する抗菌薬は何か(重症度によって使い分ける)、じゃあ重症度はどう判定するか……という風にどんどん話が広がり、非常に"Thorough"な内容となっており、包括的な知識が得られます。

Ward Work 午後の病棟業務の時間にやることは、Long CaseShort Case、暇な先生にレクチャーを受ける、先生方の仕事の手伝い(採血やMMSE をとるなど)などです。午後は、学生は基本的に好きなように実習ができます。

 私はというと、もっぱらLong caseをやっています。

Long Case
 もっぱらと言っても週に1〜2回です。先生にお願いして患者を割り当ててもらい、問診・診察をし、時間を見つけて先生にプレゼンをしにいきます。問診は、それこそまさにFOCUS でのトレーニングが活きる場ですが、それよりももっと詳細な問診が必要になります。まず苦労するのが、症状や既往歴を時系列にそって整理すること。一番苦労しているところです。FOCUS をやっているときからそれは感じていたため、FOCUS 以外でもハーバード組のN氏と何度も問診の練習をして慣れようと努めてはいましたが、なんせ高齢者でさまざまな症状、既往歴を抱えている上に、話があっちこっち飛ぶことがしばしばあり、試行錯誤を要します。既往歴についても詳細に聞くことが必要で、そのためのヒントとして"DR PIMCO" というのを教わりました。
 <2型糖尿病の既往がある場合の例>
D uration: 19 years
R isk factor: Obesity, Poor diet control, FHx
P re-symptom? (←あやふや): Polyuria, Polydipsia
I  nvestigation: OGTT, Blood test
M edication: Initialy what?, Current Mx?
C omplication: Neuropathy
O utcome: Poorly controlled HbA1c 7.9
これらを既往歴一つ一つに対して可能な限り埋められれば、患者の病歴をよく理解するのに役立ちます。
 また、プレゼンの際には治療に加えて今後のマネージメントとして家に戻るかNursing home へ入るかなどの意見も述べる必要があるため、例えば家では誰と住んでいてどのくらい世話してもらっているか、1階建てか、段差は無いか、今後どうしたいと考えているかなども聞きます。ここまでやるのはGeri だからこそかもしれません。
 結局、問診だけで40〜60分以上かけてしまいます。ほとんどの患者さんは協力的なので、それ自体問題にはなっていませんが、改善する余地は大いにあります。
 診察は可能な限り全身に対して行いますが、常々感じているのが、これは先生の前でやるわけではないので、診察方法へのフィードバックは得られません。それが難点です。
 プレゼンでは、FOCUS のおかげで構成自体は問題なく仕上げられるのですが、やはりここにきて感じられるのが臨床推論とプランニング(特に治療とマネージメント)の力不足です。思い返してみると、問診の時から既に病歴の理解に必死になっていて、鑑別を考えながら問診できていないことに気づきます。そんなこと、初心者がよくフィードバックで言われるやつじゃん、ってことは分かっていますが、なかなかね。後々になって、あれ聞けばよかったとか、あれ診察し忘れた、ってなります。でもまあ、フィードバックもらって、復習してそう気づくのを繰り返していけば慣れていくかなと思って、また頑張っていきます。
 ちなみに今日は初めて、他の病棟(腎臓内科)の患者さんのLong Case をやりました。高齢者でもありませんでした。時系列に沿って聞きたい意図を理解して下さり、比較的問診がスムーズにいったので、いつもより鑑別などを意識しながらできました。ANU の実習のいいところの一つには、こういう風に、希望すれば比較的自由に科もまたいで勉強できることがあるかもしれません。

Short Case
 実はまだ一度もやったことありません!第1週に友達がやるのを見たきりです。これはずっと先生に付き添ってもらってやるので、先生が時間があるときでないと難しいです。私は3度ほどお願いしてきましたがなかなか時間がなく難しい様子でした。5週間いた友達も2回しかできなかったそうです。しかしこれは非常に良い身体所見の練習になります。先生の前で特定の範囲の診察(Cardiovascular 限定など)をし、所見と鑑別、検査プランをプレゼンするものです。なんとかあと3日で1回くらいできればいいな!

暇な先生にレクチャーを受ける
  これが非常に勉強になります。先日研修医からせん妄のレクチャーを受けました。レクチャーといっても、質問形式で、学生が答えていきます。せん妄の定義、リスクファクター、原因、必要な検査、マネージメント(環境への介入+薬物治療)、また原因の一つの高Ca血症から発展してその鑑別などの話にまで至りました。研修医の先生がいかに整理された医学知識をお持ちかを思い知らされました。

先生方の仕事の手伝い
  んー、これはほとんどMini Mental Scale Examination を取るか、ごくまれに採血ができる、くらい。


その他には……


長くなったのでひとまずここで!

Geriatrics and Aged Care まとめ② に続きます。


かわでぃー

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